和歌山県(みかん県)にいると言われる妖怪一覧

  • イガラボシ

水の怪。河童。東牟婁郡。胡瓜を食べて水浴びに行くと、これに尻を抜かれるという。頭に皿三枚をかむり、小猿に似ているという。

 

  • イソテング

海の怪。磯天狗。須賀利。悪戯ばかりし、怪火を発するという。

 

  • イッポンダタラ

山の怪。一本だたら。熊野の山中に住むが、姿を見た者はいない。幅一尺ばかりの大足跡を、一足ずつ雪の上に印していった跡を見るのみという。

 

  • ウシオニ

動物の怪。熊野地方。一種の有蹄類で、山中、人に会うと見つめて去らず、人はついに疲労して死ぬ。これを「影を飲まれる」という。その時は「石は流れる、木の葉は沈む、牛は嘶き馬吼」と逆さごとを唱えればよい。

 

  • オオニュウドウ

道の怪。大入道。上志賀。道を行列してきて、松ノ木に登って見ていた若者を襲ったという。一つ目。

 

  • オクリスズメ

動物の怪。送雀。紀州一般に、オクリスズメが鳴くと狼がついてくるといい、またオクリオオカミがついてくる知らせだともいう。

 

  • ガキ

山の怪。餓鬼。旅人を悩ませて餓死させるという。福島県のフチカリ、愛媛県のジキトリに類似する。

 

  • カシャンボ

水の怪。河童のこと。火車坊か。毎晩牛小屋に入り、涎を牛の全身に塗りつけて病苦させること甚だしかった。夜間、灰を撒いておき、翌朝見ると水鳥様の足跡があった。西牟婁郡富田─カシャンボが夥しく上陸、藤兵衛という老人が遠方からホーイホーイとしきりに呼ばれた。騙されるものかと嘲笑っていると、たちまち耳のあたりで異様の大声で阿呆と呼ばれ、そのまま耳が聞こえなくなった。

 

  • カシラ

水の怪。西牟婁郡川添村で河童のこと。夏の間は川の淵や海辺に住んでいるが、秋口になると山へ入るという。川にいる間はゴーライまたはゴーライボウシと呼ばれ、山へ入るとカシラまたはカシャンボという。

 

  • カッパ

水の怪。河童。西牟婁郡西富田村新田─手綱を自分の体に巻いて駒を引こうとして失敗、ひきずられて厩で見つかる。川岸の岩の上に蒔いた煎り豆の生えるまで、この地には来ないと約束した。東牟婁郡熊野川町小口─娘に化けてきて、仕事中の娘を水浴に誘った。田の草取りで忙しいというと手伝ってくれた。終わって水浴したが、怪しんだ娘は尻に石を当てていて助かった。日高郡竜神村大熊─牛引きに失敗、引き上げられて農作業を手伝わされていた。こき使われて辛抱できず、天に星がなくなり川に真砂ごがなくなり、竜蔵寺に小松が生えるまでは悪さはしないと約束した。後年、ある僧が松を植えたら、はたして釣り人が捕られた。松を伐ると止んだという。寒川村土居─似た話で、牛引きに失敗、明神の草引きをさせられていたが、番をしていた人が用心して尻に石をいれておくと「あなたの尻は石尻だ」といった。

 

  • カマイタチ

道の怪。鎌鼬。県南部。路上で誤って負傷したとき、傷口が鎌形ならばカマイタチに噛まれたという。

 

  • ゴウラ

水の怪。河童のこと。カワトノともいう。

 

  • コサメコジョロウ

動物の怪。コサメ小女郎。日高郡竜神村小又川。オエガウラ淵にいた。何百年経たとも知れぬコサメ(ヤマメ)が美女に化けて、淵辺に来る人を水中に誘っては殺して食った。ある時、小四郎という男に、「薪を明かりにして七年続けて飼った鵜を淵にさしむけられたら、われも敵かなわぬ」ともらし、その通りにされて退治された。腹からキザミナタ七本が出てきた。樵夫が腰に差したまま飲まれ、その身が溶けて鉈のみが残ったものであった。

 

  • サトリ

山の怪。山男、ヤマオジ、ニタともいう。丸裸で松脂を塗り、髭が全身を被っている。言語も通じず生食を事とする。いわば猴類(猿の仲間)で、二手二足あり、よく人の心中を察し、生け捕りして殺そうと思うとたちまち去る。

 

  • サンタツ

動物の怪。伊都郡でいう深山に住む魔物。猫に似た形で尾が長い。畑の茄子を取りに来ることがある。同地方で鼬の類というが、柳田國男によれば山獺かという。

 

  • シイ

山の怪。餓鬼。熊野地方。山路の亡霊が旅人を悩ませて、飢餓させる。

 

  • シイ

動物の怪。牛の害敵。有田郡ではシイはヤマアラシのことといい、牛はこれをひどく恐れるので、牛言葉でシイシイというとある。

 

  • ショウジョウ

動物の怪。猩々。田辺の若者が元町天神崎の海岸で一人笛を吹いていると、美しい女が現れてその音に聞き惚れていた。やがて一曲所望し「私は海に住む猩々の女です」と名乗った。若者が乞われるまま一曲吹くと、猩々は自分の髪の毛を一本抜き、釣り針をつけて「これは餌をつけなくとも望みの魚が釣れる道具です」と言って若者に渡すと消えたという。西富田村大字細野に猩々小屋がある。昔、城主の命令で猩々を捕らえるため一斗五升の酒を五升に煮詰めてこの小屋に置き、海から出てこれを飲み、酔った猩々を捕らえたという。

 

  • ダル

道の怪。旧中辺路街道の坂の中ほどにある地蔵の前を通ると憑かれる。空腹の時なら一歩も歩けなくなる。その時、弁当箱に御飯粒が残っていれば、十粒でも食べれば元気が出て歩き出せる。ない時は米という字を掌てのひらに書いて嘗なめるだけでもよい。

 

  • テング

山の怪。天狗。西牟婁郡三舞村─金子徳兵衛は川へ落ちたところを天狗に助けられて以来、天狗と交際するようになった。空を飛ぶ天狗に乗せられて方々見たという。明治時代なので、これを巡査に咎がめられると、天狗はそれは徳兵衛が悪いと両手をくっつけて離れないようにした。天狗が現れるときは鈴の音が聞こえ、鉄扇を持った徳兵衛は家を出て十歩もしないうちに姿が消えたという。天狗の足跡は人間の三倍もあり、村人はここに社殿を建てて礼拝した。西富田村串ヶ峰─天狗谷に間宮イン八が行くと、夜半、赤松の上から「薪をやろうか」と声があり、「薪を貰おう」と答えると女の生首が落ちてきた。火にくべるとニタニタ笑った。「またやろうか」というので「今度はこちらがやるぞ」と銃で撃つと、手応えがあった。その後、八湯崎温泉にいくと、「イン八に翼を撃たれた」という僧に会った。鉛山(湯崎温泉)の猟師にも似た話が伝わる。

 

  • ドンガス

水の怪。河童。和歌山市でいう。

 

  • ニクスイ

山の怪。肉吸い。東牟婁郡焼尾。果無山に出た。人に触るとたちまち、悉ごとくその肉を吸い取るという。十七、八の娘に化けて出て火を貸せといった。ナムアミダブツの弾丸を撃とうとしたら消えた。明治二十六年には郵便脚夫が木の本付近の峠で会った。火縄を打ちつけると女は引き返したという。

 

  • ネコノカイ

動物の怪。猫の怪。ある人が猫を殺して埋めたところ、その猫の口から南瓜の芽が生え、生長して毒のある南瓜がなった。殺した人に食わせて怨みを晴らそうとしたのだという。猫を殺すと猫の死霊に取り憑かれる。側へ行ってみたり、助けようとしても憑かれるという。

 

  • フンゴロボウシ

水の怪。串本市。河童のこと。ガッタラボウシとも。

 

  • マクラガエシ

山の怪。枕返し。日高郡龍神村小又川で、七人の杣が山中で檜の木を伐ったところ、その晩、枕を並べて寝ていた七人とも死んでしまった。檜の精のいたすところという。

 

  • モクリコクリ

山・海・動物の怪。蒙古高句麗と当てる。三月三日は山に、五月五日は海に出るという。麦畑に、たちまち高く、たちまち低く人の形をして、一顕一消するという。また神子浜では、鼬に似た小獣で、麦畑にいて、夜くる人の尻を抜くという。クラゲのような形で、海上を群れて漂うともいう。蒙古襲来時、水死した霊魂という。

 

  • ユキンボ

雪の怪。伊都郡見好村。雪の降りつむ夜、出てくる妖怪で、小児のような形をし、一本足で飛び歩く。雪の朝、樹下に円形の窪みが所々にあるのはその足跡という。雪坊の意味か。